kaeru icon之機堂

音韻論

音節

雰語の音節は明確な構造を有し、「(C)V(X)T」という形で記述することが可能である。ここで C は頭子音、 V は母音、 X は末子音、 T は声調を指す。括弧で囲んだ要素は存在しない場合もある。

頭子音

雰語では20の頭子音が区別される。左側がラテン文字転写、右側がIPA表記である。

/h/の調音は話者によって様々であるが、狭母音 (/i/, /u/) の前では[x]、それ以外の母音の前では[h]として実現される傾向にある。

頭子音両唇歯茎口蓋軟口蓋声門
破裂無声p /p/t /t/k /k/
有声b /b/d /d/g /g/
m /m/n /n/
破擦無声c /t͡s/q /t͡ʃ/
有声j /d͡ʒ/
摩擦無声f /ɸ/s /s/x /ʃ/h /h/ [h~x]
有声v /β/z /z/
接近w /w/y /j/
側面接近l /l/

母音

単母音

雰語では5の単母音が区別される。左側がラテン文字転写、右側がIPA表記である。

母音前舌中舌後舌
i /i/u /ɯ/
中間e /ɛ/o /o/
a /a/

二重母音

雰語の二重母音には ao /ao/ai /ai/ua /ɯa/uo /ɯo/の4つが存在する。

規範的には上記の発音に沿って発話されるが、砕けた口語においてはaoaiが次のように融合することも多い。

二重母音規範的口語
末子音なしn, m, ng の前s, l の前
/ao/[ao][ɔː][ɔ]
/ai/[ai][eː][e]
/ua/[ɯa]
/uo/[ɯo]

末子音

雰語では5の末子音が区別される。左側がラテン文字転写、右側がIPA表記である。

末子音両唇歯茎口蓋軟口蓋声門
破裂無声
有声
m /m/n /n/ng /ŋ/
破擦無声
有声
摩擦無声s /s/ [s(~h)] *1
有声
接近
側面接近l /l/ [l~ɫ~ɯ] *2

*1: 末子音 /s/ の実現には個人差・地域差がある。基本的にはどんな場面でも [s] を用いる話者が多いが、特に北部地域の話者は連音規則(後述)が適用される音節以外において末子音の /s/[h] で実現する傾向にある。
*2: 連音規則が適用される音節以外の末子音 /l/ は母音化する傾向にある。特に、二重母音との混同を避けるため、二重母音の末音として用いられない母音 [ɯ] への弱化が好まれる。

声調

雰語は声調言語であり、3つの声調が区別される。転写例では便宜上 a を例に取る。

第一声

高く平らな声調。調値は /⁵⁵/。ラテン文字転写では á 、数字表記では a1 と表記される。

第二声

低く平らな声調。調値は /²²/。ラテン文字転写では à 、数字表記では a2 と表記される。

但し、第二声が2つ以上連続する場合には末尾以外の音節の声調が/²⁴/に変化する。これは語を跨いで第二声が連続する場合にも発生する。

第三声

高くから下降する声調。調値は /⁵³/。ラテン文字転写では â 、数字表記では a3 と表記される。

音配列の禁則

雰語の音節のうち、yiwu を含むものは禁則であり出現しない。

連音規則

閉音節(末子音のある音節)の後ろに母音または頭子音/j/で始まる音節が続く場合、閉音節の末子音を次の音節が引き継ぐ。特に頭子音 /j/ で始まる音節が後続している場合には、閉音節の末子音が口蓋化した上で引き継がれる。

またこの連音により、雰拼での表記上は区別される語でも、発音上では区別されなくなる場合があることに注意。

末子音が無い開音節では主母音が長く発音され、これによって閉音節と開音節が区別される。例えば jèl'úasjè'lúas は、母音/ɛ/の持続時間によってのみ区別される。

また、末子音 /s//ʃ/, /t͡ʃ/, /d͡ʒ/ のいずれかで始まる音節が後続する場合、末子音 /s/ は同化して [ʃ] と発音される。更に、末子音 /s//z/ で始まる音節が後続すると、末子音 /s/ は同化して [z] と発音される。

000000